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運動指導時に大切にしていること

皆さんこんにちは。

本日は、私たちが日頃、指導者として日々選手と向き合う中で、大切にしている考え方や指導法について共有したいと思います。この記事は、スポーツコーチや体育教師、子どもたちの運動指導に関わる方々に少しでも参考にしていただければ幸いです。

具体と抽象の適切な使い分け

運動指導において、「具体的指導」と「抽象的指導」を適切に使い分けることは非常に重要なことであると私たちは考えています。

具体的指導は、運動を実施する本人に対して、「何をするか」「どう動くか」を明確に伝えるアプローチです。例えば、「背筋を伸ばして」「膝を90度に曲げて」といった具体的な動作の指示がこれにあたります。

一方、抽象的指導は「どう感じるか」「どんな感覚か」にフォーカスするアプローチです。「糸で吊るされているイメージで」「熱い鉄板の上を走るように」といった感覚的な表現を使います。

どちらが優れているという話もさまざまな意見が飛び交うかと思いますが、どちらかというと指導対象によってこれらを使い分けることが大切です。

初心者や子どもたちには、まず具体的な体験を与え、「この感じだよ」と実感させることが重要かもしれません。例えば前転を教える場合、言葉だけでは伝わりません。手足を持って「ぐるんと回す」体験をさせた後に、言葉で説明するというステップが効果的な場合もあります。

トップレベルの選手には、むしろ抽象的な感覚を重視した指導が有効です。彼らはすでに基本的な動作を習得しており、感覚的な微調整によってパフォーマンスを向上させることができるでしょう。

環境設定による学習の促進

指導者が一方的に教え込むのではなく、適切な環境設定によって選手自身が学びを得られるようにすることが重要です。

例えば、スプリントにおいて四の字(フィギュアフォーポジション)の練習では、ハードルやマーカーを子どもの身長や能力に合わせて設置し、自然とその動きが出るように誘導します。動きを細かく指導しすぎるのではなく、環境によって正しい動きを引き出すのです。

上記は、制約主導アプローチと呼ばれるコーチングメソッドとしてよく知られる例ですが、例えば、スプリント練習で腕振りを改善したい場合、「肘を90度に」と指示するのではなく、ボールを持たせるなど腕を使えない状況を作り出します。すると自然と背骨の動きが出て、結果的に腕振りも改善されることを期待する方法などもあります。

探索型学習の重要性

選手が受動的に指示に従うのではなく、自ら「探索」して最適な動きを見つけることが深い学びにつながります。

探索を促すためには、選手に「気持ちいい走り方を見つけてみて!」と投げかけ、様々な環境や条件で動きを試行してもらいます。例えば、同じランジという動作でも、平らな地面、凸凹のマット、斜めの地面など様々な環境で行うことで、「止まる時はこういう感じ」という本質的な感覚を身につけることができます。

重要なのは、探索には選手の主体性が不可欠だということです。探索というのは非常に能動的なプロセスであり、選手自身がその価値を感じていなければ探索はしません。そのためには、コーチと選手の間に信頼関係が築かれていることが重要です。

失敗をデザインする

学習を促進するためには、選手が「失敗」から学べる環境を意図的に作ることも重要です。例えば、バランスを崩しやすい状況を作り、「今、斜めになっていた」と気づかせることで、正しい姿勢や動きの自覚を促します。

ターゲットがそこになければ、うまくタッチできているのか?バランスは取れていたのかがわかりませんが、明確にターゲットがあり、そのターゲットに当たったか否かを本人が判別しやすい状況を作ることで、「自らがエラーに気づける状態」を作っていきます。

重要なことは、失敗は責めるものではなく、学びの機会として捉えることです。エクササイズを行う中で、失敗を通じて自分の動きや感覚に気づきやすくなります。

年齢や能力に応じた指導法

私たちは、低学年の子どもと高学年の子ども、初心者とトップレベルの選手で、指導法をそれぞれ変えています。

低学年の子どもには事細かな指示が伝わりにくいため、道具を使った活動やゲームライクなアクティビティを中心に指導します。例えば、ボールを使ったリレーやズリバイ競争など、遊び感覚で背骨や姿勢に刺激を入れる方法などが有効です。

高学年になると抽象的・具体的な指示も理解できるようになるので、言語的なアプローチと感覚的なアプローチを組み合わせた指導も取り入れられます。常に選手の理解度を見ながら、具体と抽象を行き来する指導を心がけています。

まとめ:コーチと選手の信頼関係

これらすべての指導法の基盤となるのは、コーチと選手の間の信頼関係です。
信頼関係が構築されていることで、選手は抽象的な指導や探索型学習にも積極的に取り組むことができます。

日々の練習から信頼関係を築き、選手の主体性や意欲を引き出していくことが、長期的な成長につながると、私たちは考えています。

スポーツ指導においては、正解を押し付けるのではなく、選手自身が気づき、学び、成長できる環境を作ることが最も大切なのではないでしょうか。

トレーニング・コンディショニングにご興味のある方はぜひ 一度体験にお越しください。

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