私たちが担当するバスケットボール選手のトレーニングでは、動的システム理論(Dynamic Systems Theory, DST)を基盤とし、選手の身体が環境や課題に適応しながら最適な動作を自己組織化できるように設計しています。特に、自己安定化(self-stabilization)、無意識下での制御(implicit control)、共収縮(co-contraction)を伴ったエクササイズを用いることで、選手が試合中の変化する状況に即応できる能力を養います。
本記事では、動的システム理論の基本概念を押さえながら、実際に私たちが導入しているトレーニングの具体例を紹介します。
1. 動的システム理論とは?
動的システム理論(DST)では、運動は単なる筋力やフォームの問題ではなく、環境、課題、身体の相互作用によって自己組織化されると考えられています。従来の「理想的なフォームを指導する」アプローチとは異なり、選手自身が環境の中で最適な動作を見つけることを促します。
(1) 自己安定化と自己組織化の重要性
選手が試合中に意図的に動作をコントロールしようとすると、反応が遅れ、流動的なプレーができません。最適なパフォーマンスを発揮するには、無意識レベルでの制御が必要です。私たちのトレーニングでは、自己安定化を促すエクササイズを導入し、身体が自然に安定した動作を見つけるようにします。
(2) 共収縮を活用した動作制御
バスケットボールでは、高速な動作と安定性のバランスが重要です。そのため、単なる筋力強化ではなく、共収縮(co-contraction)による適切な動作の安定化を促します。共収縮とは、異なる筋群が同時に収縮し、関節の安定性を確保する現象のことを指します。
例えば、シュート時には膝関節周囲の筋群が共収縮することで、ブレのない安定したフォームが作られます。
2. 共収縮を伴うエクササイズ例
共収縮を伴うエクササイズ例1(減速動作)
共収縮を伴うエクササイズ例2(踏切動作)
共収縮を伴うエクササイズ例3(方向転換)
3. 実践におけるトレーニングの考え方
動的システム理論に基づいたトレーニングでは、選手に正解のフォームを押し付けるのではなく、環境を操作し、選手が自ら適応できる状況を作ることが重要です。以下の点を意識しながら、トレーニングをデザインしています。
(1) 制約主導型アプローチ(CLA)を活用する
選手の動作は環境・タスク・個体の相互作用によって決まります。トレーニングの中で、これらの要素に制約をかけ、選手自身が最適な動作を見つけることを促します。
(2) トレーニングは課題志向型にする
「こう動くべき」ではなく、「この状況でどう動くべきかが自己組織化のプロセスを通じて決定される」トレーニングを重視します。練習やトレーニングの中ではコーチが全てを教えるのではなく、選手が考え、試行錯誤しながら動作を最適化できる環境を整えます。
まとめ
私たちのバスケットボール選手向けトレーニングでは、動的システム理論を基盤とした自己安定化、自己組織化、無意識下での制御を強化するアプローチを取り入れています。単なる筋力向上ではなく、選手が試合中に直面する不確実な状況の中で、最適な動作を自然に見つけられる能力を養うことが目的です。今後も、環境を活用したトレーニングを通じて、選手の成長をサポートしていきます。
トレーニングにご興味のある方は下記よりお問い合わせください。