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子どもの”伸びしろ”を守る — スポーツ科学が教える「負荷可能性」という考え方

「うちの子はすごく上達した」と思っていたのに、ある日突然、肘や腰を痛めてしまう。そんな話が、ジュニア期のスポーツでは後を絶ちません。今回は、なぜそれが起きるのか、そしてどう防ぐのか。スポーツ科学が長年蓄積してきた「負荷可能性(ふかかのうせい)」という考え方をご紹介します。

「うまくなる」と「強くなる」は、実は別物

スポーツの上達には、二つの側面があります。

ひとつは、見えやすい「パフォーマンス」。走るのが速くなった、シュートが入るようになった、技がきれいになった……誰の目にも分かる変化です。
もうひとつは、見えにくい「負荷可能性」。その子の体が”これくらいの負荷なら受け止められる”という、内側のキャパシティのことです。

学校のテストでたとえると分かりやすいかもしれません。

  • パフォーマンス = テストの点数
  • 負荷可能性 = 本当の学力

一夜漬けで点数だけ上げることはできますが、”学力がついた”ことにはなりませんよね。スポーツでも同じです。見える上達のスピードと、内側の身体が育つスピードは違うのです。

「負荷」と「荷重」 — 似て非なる二つの言葉

スポーツ科学では、外から与える刺激を「負荷」、その結果として体の内側にかかるものを「荷重」と区別します。

料理にたとえれば、コックが鍋に入れた塩の量が「負荷」、それを口にした人が感じる塩辛さが「荷重」。同じ塩の量(=同じ練習)でも、食べる人(=選手)によって感じ方はまったく違う。

だからこそ「みんなで同じ練習を同じ量だけ」ではなく、一人ひとりの”負荷可能性”を見ながら調整するという発想が必要になります。

同じ14歳でも、体の中の”年齢”はバラバラ

ジュニア指導で最も大切な前提は──

ジュニア選手は、小さな大人ではない。

同じ「14歳の中学生」でも、骨年齢では2歳ほどの幅があります。クラスの背の順がバラバラなのと同じように、目に見えないところでもバラつきがある。

にもかかわらず「学年が同じだから同じメニュー」と一律に与えてしまうと、ある子には適切な負荷でも、別の子にはオーバーワーク、ということが普通に起こります。

思春期に潜む「リスクゾーン」

ジュニア期にもう一つ知っておきたいのが、「リスクゾーン」と呼ばれる時期です。

神経系(脳と神経の働き)は10歳前後で急激に発達し、思春期にはほぼ大人並みに。だから子どもなのに大人顔負けの巧みな動きができるようになります。

一方、骨や関節などの骨格系は、思春期に一時的に脆くなる時期があります。成長点が活発に動いている、いわば “工事中”の状態だからです。

ここで何が起きるか。神経系から見れば「すごい動きができる選手」なのに、向こう側で骨が悲鳴を上げているという事態です。

「最新のソフトウェアを、古いハードウェアで動かしている」ようなもの。表面のパフォーマンスは上がっていても、土台のキャパシティはまだ追いついていない。気づいたときには疲労骨折、肘や膝の故障……という結果になりかねません。

0か100かではなく、”ちょうどいい刺激”を

スポーツ科学には「Roux の法則」という古典的な原則があります。

  • 刺激が足りなければ衰える
  • 刺激が強すぎれば壊れる
  • 適度な刺激でこそ、発達する

植木に水をやるのと同じです。あげなさすぎれば枯れ、あげすぎれば根が腐る。

現代の子どもは外遊びや日常の身体活動が大きく減りました。その結果、「家ではほぼゴロゴロ → 練習日は強度MAX」という、0か100かの両極端になりがちです。本当に必要なのは、その間にある“ちょうどいい中程度の刺激”を、毎日積み上げることかもしれません。

まとめ

負荷可能性という考え方を一言でまとめるとこうなります。

見えるパフォーマンスの裏側で進む、見えない適応プロセスにも目を配ろう。

「すぐに上がるもの(パフォーマンス)」と「長く育てていくもの(負荷可能性)」。この二つを分けて見る目を、保護者・指導者・選手自身が持てるかどうか。それが、ジュニア期を健やかに乗り切れるかどうかの分かれ道になります。

「うちの子はすごく上達した」と感じたときこそ、もう一度立ち止まって、こう問いかけてみてください。
「内側の体は、その上達についてこれているだろうか?」

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最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました!

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